コアコンセプト:若い自分のクローンに脳移植したら転生になるんじゃね? ある科学者はこう考えた。自分のクローンを作り、そこに自分の脳と脊髄を移植すれば、老化していない新しい自分の身体が得られる。 彼は動物実験を繰り返し、脳移植の可能性を探ろうとした。脳を移植されたマウスは、元気になることもあれば、死ぬこともあった。その死に方が普通ではなかった。まるで身体が新しい脳を拒むかのように、全身の血液が硬直し、組織が自ずと壊死していく。クローンである以上、拒否反応はおこらないはずなのに。なぜ? 彼は、マウスたちの様子から、身体側を持つ個体と脳を持つ個体との関係がこの現象を説明するのではないかと考える。中の良いマウス同士であれば、拒否反応は起こらず、転生が成功するのではないか、と。 この仮説を検証するために、科学者は既に持っていた自分のクローンを2体を用いて実験することにした(クローンは自分の分身であり、実験用であれば研究者が自由に扱っても良い、という生命倫理がこの時すでに形成されていた) この双子は普通の子供たちと同じように育てられていたが、ある日唐突に兄の脳と弟の脳と交換することが告げられる。 双子の年齢は15歳(中3) アイデンティティを意識する年齢。 中1の時、彼らはお互いを二人セットで扱われることを嫌い、別々の学校にいくようになった。兄はスポーツが得意、弟は勉強が得意。 けれども、別れようとした二人の運命は、外部からの強い力によって再び交差する。二人の脳を交換する実験の話がくる。成功するための条件は、お互いの脳がお互いの身体を好意をもって受け入れること。 うまくいかなければ二人とも死ぬ。 手術が成功して三年後、2人は全く別の人生を歩んでいた。弟の脳と兄の体を手に入れた方(以後、弟)は、目覚しい才能を開花させ、国内有数の大学に進学しようとしていた。一方の兄は落ちぶれて、半ば引きこもりのような生活を送っていた。 兄はこのねじれた現状の原因が3年前の手術にあると考える。父に懇願し、2人の身体を再び交換するように頼むが、冷たくあしらわれる。行き詰まった兄は、「自分の体ならば、自分で壊しても問題ないだろう」という考えに至り、弟の殺害を試みる。